インテルは、同社初となるPC自作キット「DC3217BY」と「DC3217IYE」を発売した。同社が提唱する小型PCフォームファクタ「Next Unit of Computing(NUC)」に準拠するPC自作キットで、手のひらに乗るほどの超小型筐体が大きな特徴となっている。今回、実際に製品を入手したので、ハード面の詳細やパフォーマンスなどを見ていきたいと思う。
余裕で手のひらに乗る超小型筐体
4×4インチ(101.6×101.6mm)の独自フォームファクタマザーボードを利用するNUC。対応マザーボードが先に秋葉原などのパーツショップで発売されたのに続き、専用筐体やACアダプタなどを同梱したPC自作キット「DC3217BY」および「DC3217YE」が、12月上旬に発売された。CPUやマザーボード、SSDなど、PC自作の要となるインテル製パーツはおなじみだが、同社製のPC自作キットはこれらが初となる。
特徴は、やはりその超小型筐体に尽きる。超小型マザーボードを利用したことで、筐体のサイズは116.6×120×39mm(幅×奥行き×高さ)と、手の平にも余裕で乗るコンパクトさだ。重量も実測で476g(DC3217BYのベアボーンキットのみでメモリやSSDなど非搭載の状態)と軽い。サイズ的には、Apple TVを若干大きくした程度。ほぼフル機能が利用できるデスクトップPCと考えると、この小ささは驚異的と言える。利用している筐体は、DC3217BYおよびDC3217YEとも同じものだが、トップのカラーはDC3217BYがマルーン(栗色、赤茶色のようなもの)、DC3217YEがブラックと異なっている。
この筐体は、基本的には横置きで使うようになっているが、縦置きでも安定して設置可能。また、100×100mmまたは75×75mmのVESAマウントに設置できるマウンタが付属しており、小型筐体を活かして液晶背面に設置することも可能となっている。
製品の仕様は、一般的なPCベアボーンキットとほぼ同じだ。パッケージには、CPU搭載のマザーボードが組み込まれた専用筐体とACアダプタ、VESAマウント取り付け用マウンタとネジ、そして簡単なマニュアルが付属するのみとなっている。そのため、利用時には別途メモリモジュールとストレージデバイス、OSを用意する必要がある。また、ACアダプタは付属しているものの、電源ケーブルは付属しないため、電源ケーブルも用意しなければならない。電源ケーブル接続コネクタは、3ピン仕様の、いわゆるミッキータイプコネクタとなっている。
ちなみに、製品パッケージには光センサーを利用して、筐体を開けるとおなじみのインテルのジングルが流れる仕組みが盛り込まれている。初めて開けるとちょっとびっくりするが、なかなか面白いギミックだ。
DC3217BYの本体。フットプリントは116.6×120mmと手のひらに余裕で乗るコンパクトな筐体を採用。上部カラーは光沢感のあるマルーン
こちらはDC3217YE。上部カラーが光沢感のあるブラックとなっているが、筐体の仕様はDC3217BYと同等だ
DC3217BY正面。高さは39mmとなっている
3.5インチHDDと並べると、コンパクトさがよくわかる
高さは3.5インチHDD 2個分より低い
側面はコネクタなどはなくスッキリしている。またフラットなので横置きでの利用も問題ない
背面。電源や各種接続コネクタに加え、空冷ファンの排気用スリットが見える
こちらはDC3217YEの背面。用意されている接続コネクタが若干異なっている
底面。ゴム足の中に見えるネジを外すと内部にアクセス可能。また、吸気用のスリットも見える
重量は実測で476gだった。メモリやSSDを搭載しても500g程度にしかならないだろう
製品パッケージは、製品自体が小さいこともありかなりコンパクトだ
筐体には光センサーで動作するサウンド再生ギミックがあり、筐体を開けるとおなじみのインテルのジングルが流れるようになっている
製品の内容物一覧。本体とACアダプタ、VESAマウント取り付け用マウンタとネジ、マニュアルが付属する
VESAマウント取り付け用マウンタ。100×100mmおよび75×75mmに対応している
このように液晶背面のVESAマウントに固定して使用可能だ
付属のACアダプタ。ノートPC用のACアダプタとほぼ同等のサイズだ
パッケージにはACアダプタの電源ケーブルが付属しないため、別途用意する必要がある。3ピンのミッキータイプコネクタとなっているので注意
Core i3-3217Uをオンボードで搭載
DC3217BYおよびDC3217YEで採用されているマザーボードは、DC3217BYが「D33217CK」、DC3217YEが「D33217GKE」となっている。どちらも、CPUとしてCore i3-3217Uをオンボードで搭載している。TDPが17Wの省電力CPUで、UltrabookなどのモバイルPC向けのものだ。チップセットもモバイル向けのIntel QS77 Expressで、グラフィックス機能はCPU内蔵のIntel HD Graphics 4000を利用というように、システム構成にはUltrabookに近いと考えていい。
マザーボードを見ると、一方の面にCPUとチップセットが搭載され、それらを覆うようにヒートシンクと空冷用のファンが取り付けられている。また、もう一方の面にはメインメモリ用のSO-DIMMスロットが2本と、フルサイズおよびハーフサイズに対応するmini PCI Expressスロットが1本ずつ用意されるとともに、外部接続ポートが取り付けられている。
メインメモリには、ノートPC用のSO-DIMMを利用する。PC3-12800 DDR3 SDRAMまで対応するとともに、メモリモジュールを2枚搭載すれば、デュアルチャネルアクセスとなる。
2本あるmini PCI Expressスロットのうち、フルサイズのスロットはmSATAをサポートしており、mSATA SSDを取り付けられる。ハーフサイズのmini PCI Expressスロットは無線LANモジュールの利用が想定されており、筐体には無線LAN用のアンテナが2つ取り付けられるとともに、アンテナケーブルがmini PCI Expressスロット付近まで延びている。そして、マニュアルには、対応するインテル製無線LANモジュールの型番が記載されている。
前述の通り利用時には、最低限メインメモリ用のメモリモジュールとストレージデバイスのmSATA対応SSDを用意する必要があるが、これらの入手性はそれほど難しくはない。メモリに関しては、ノートPC用のSO-DIMMがそのまま利用できるため、すぐに入手可能。mSATA対応のSSDは、一般的なSSDと比較するとやや入手性が悪いものの、秋葉原のPCパーツショップやオンラインのPCパーツ販売サイトなどで購入できるため、こちらも問題はないだろう。
ただし、無線LANモジュールはかなりやっかいだ。パッケージには無線LANモジュールは付属せず、筐体にも技術基準適合証明マークは記載されていない。インテルに確認したところ、技術基準適合証明の申請も行なっていないそうだ。もともと、インテル製無線LANモジュールは単体で販売されていないため、実際に対応する無線LANモジュールを入手するのはかなり難しいが、もし入手できたとしても、筐体に技適マークがないため国内では利用できないことになる。そのため、無線LANモジュールの利用は、国内では事実上不可能と言える。
筐体底面を開けた状態。メインメモリ用のSO-DIMMスロットが2本と、mini PCI Expressスロットが2つ見える。また、フルサイズのmini PCI ExpressスロットはmSATA対応で、SSDを取り付けて利用可能だ
DC3217BYのマザーボード「D33217CK」。サイズは4×4インチ(101.6×101.6mm)の正方形。こちらは底面側で、SO-DIMMスロットとmini PCI Expressスロット以外に外部接続コネクタが取り付けられている
基板上部側。こちらにはCPUとチップセットが取り付けられており、CPUとチップセットはヒートシンクと空冷ファンで覆われている
空冷ファンは薄型のものを採用
空冷ファンとヒートシンクを外した状態。CPUはCore i3-3217U、チップセットはIntel QS77 Expressで、どちらもUltrabookに採用されるモバイル向けのものだ
こちらはDC3217YEのマザーボード「D33217GKE」。D33217CKとは外部コネクタに違いがあるが、それ以外の仕様は同じだ
マザーボード上面側はD33217CKと見分けが付かない。搭載CPUとチップセットも同じだ
D33217CK(左)とD33217GKE(右)を並べてにると、コネクタ部分の違い以外は同じことがわかる
筐体には無線LAN用のアンテナが2個搭載されている
無線LANのアンテナケーブルは、mini PCI Expressスロット付近まで延びている
マニュアルには、対応する無線LANモジュールの型番が記載されているが、入手するのは難しく、技適マークもないため、事実上使用できない
背面の外部接続ポートに違いがある
ここまで紹介した部分は、DC3217BYおよびDC3217YEとも同じで、筐体前面にも双方ともUSB 2.0ポートが1ポート用意されている。それに対し、筐体背面に用意されている接続ポートには若干の違いがある。
DC3217BYでは、背面にThunderbolt×1とHDMI×1、USB 2.0×2、電源コネクタの各ポートが、DC3217YEではGigabit Ethernet×1、HDMI×2、USB 2.0×2、電源コネクタが用意されている。また、サウンド出力用の端子は双方とも備わっておらず、ThunderboltまたはHDMI経由での出力のみに対応する。大きな違いとなるのは、ThunderboltとGigabit Ethernetの有無だ。
DC3217BYでは、Thunderboltが用意されているのに対し、Gigabit Ethernetがないため、Thunderbolt接続やUSB接続のLANアダプタを利用するか、内部に無線LANモジュールを取り付けない限りネットワークアクセスが不可能。ただ、Thunderboltにはディスプレイや外付けストレージ、Gigabit Ethernetアダプタなどをデイジーチェーン接続できるため、拡張性はDC3217BYの方が優れる。特に、双方ともUSB 3.0ポートが用意されないため、高速な外部ストレージを利用する場合には、ThunderboltのあるDC3217BYのほうが圧倒的に有利だ。
対するDC3217YEは、Thunderboltがない代わりにGigabit Ethernetが標準で用意されており、別途LANアダプタを用意せずともネットワークアクセスが可能なため、標準状態での扱いやすさはDC3217BYより上と言える。特に外部ストレージなどを拡張せずに単体のみでの利用が中心となるなら、DC3217YEの方が魅力がある。また、双方ともデュアルディスプレイ出力に対応するが、DC3217BYでは一方がThunderboltからの出力となるため、変換ケーブルなどの用意も必要となる。
このような違いがあるため、購入時にはどういった用途に利用するかを考えた上で選択する必要がある。
正面側には、双方ともUSB 2.0ポートが1ポート用意されている
DC3217BYの背面には、Thunderbolt×1、HDMI×1、USB 2.0×2、電源コネクタの各ポートを用意。ネットワーク機能は搭載されない
こちらはDC3217YEの背面。Gigabit Ethernet×1、HDMI×2、USB 2.0×2、電源コネクタの各ポートがある。Gigabit Ethernetがあるため、こちらの方が扱いやすい
パフォーマンスはUltrabook相当
では、パフォーマンスを見ていくことにしよう。外部接続ポートの違いはあるものの、搭載CPUなどその他の基本的な仕様はDC3217BYおよびDC3217YEとも同じなので、今回はDC3217YEを利用してテストを行なった。テストでは、メインメモリにPC3-12800準拠の4GB DDR3 SDRAM SO-DIMMを2枚と、mSATA仕様のSSDとして、Crucial m4 mSATA SSD 128GBを用意し、Windows 7 Professional SP1 64bitをインストールした。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark 7 v1.0.4」、「PCMark Vantage Build 1.0.1 1901」、「PCMark05 Build 1.2.0 1901」、「3DMark06 Build 1.1.0 1901」、カプコンの「モンスターハンターフロンティアベンチマーク【大討伐】」、セガの「ファンタシースターオンライン2キャラクタークリエイト体験版」の6種類。比較用として、Windows 7プリインストールの、NEC「LaVie Z PC-LZ750HS」と日本エイサーの「Aspire S5」の結果も掲載してある。
メインメモリには、一般的なノートPC用のDDR3 SDRAM SO-DIMMモジュールが利用できる。PC3-12800 DDR3 SDRAMまで対応
mSATA仕様のSSDが利用できる。今回は、Crucial m4 mSATA SSD 128GBを用意して利用した