サイズ・解像度の異なるモニター4機種を比較した
 PC環境を整えるにあたり、悩ましいことの1つがモニター選び。インチサイズの違いはもちろんのこと、最近では横幅の広いウルトラワイド系の製品も増えて選択肢が広がったことで、なおさら迷ってしまいがち。実際に使ってみないとサイズ感や解像度が自分の用途に適切か分かりにくい、というのも難しさを増している要因かもしれない。
 そこでサイズの異なる4機種のPCモニターを用意し、それぞれで見た目や使い勝手がどう変わってくるのか比較してみることにした。入力端子の数や種類、リフレッシュレートなどモニターの比較要素は数多くあるが、今回は主にサイズと解像度という側面からチェックしてみた。検証に利用したのは以下A~Dとして挙げたEIZOの「FlexScan」シリーズだ。
A:23.8型フルHD(1,920×1,080ドット)
EIZO「FlexScan EV2490」
B:27型WQHD(2,560×1,440ドット)
EIZO「FlexScan EV2795」
C:31.5型4K(3,840×2,160ドット)
EIZO「FlexScan EV3285」
D:37.5型UWQHD+(3,840×1,600ドット)
EIZO「FlexScan EV3895」記事目次
 (1) サイズと解像度ごとに最適なスケーリング・距離・画面レイアウトを検証
 (2) 「スケーリング」設定による見え方の違いをチェック
 (3) サイズ・解像度で異なる最適な「距離」をチェック
 (4) 効率よく使える機種ごとの「画面レイアウト」をチェック
 (5) PC2台活用に便利なピクチャー・バイ・ピクチャー
 (6) スタンドやインターフェイスによるセッティングのしやすさにも注目

サイズと解像度ごとに最適なスケーリング・距離・画面レイアウトを検証
 PCモニターはデスク上に置いて比較的間近から使うことになる都合上、「大きければ大きいほどいい」と思えるリビングのTVと違って、環境に応じた適切なサイズ感により注意を払わなければならない。
 たとえば、大画面すぎるモニターだと、画面隅の方を見るのに目だけでなく首も動かさなければならなかったり、反対に小さい画面だと細かい部分を見るのに姿勢が前のめりになったりする。そうすると使いにくいうえに疲れやすくもなるだろう。
 解像度についても、大画面なのに解像度が低いモニターだとその画面の広さを有効活用できないことになるし、小さい画面で解像度が高すぎると今度は文字などが視認しにくくなってしまう。画面のサイズと解像度は密接に結び付いており、そのバランスが重要であることは言うまでもない。
モニターを選ぶときはサイズと解像度のバランスが重要
 ただし、文字の表示サイズをソフトウェア的に変更することで、そうしたバランスを調整できる「スケーリング」機能がOS側に用意されている。Windowsではディスプレイ設定の「拡大/縮小」で自在に変更でき、macOSでも数段階の中から表示サイズを選ぶことが可能になっている。モニターのサイズ・解像度のバランスが自分の使い方に多少合っていなかったとしても、ある程度の範囲であれば調整できるわけだ。
Windowsのディスプレイ設定では、スケーリングを100~500%の間で変更可能
macOSもスケーリングを数段階から切り替えられる
 もちろん、サイズ・解像度のバランスは目からモニターまでの「距離」も関係してくるだろうし、PCの使い方(どんなアプリを使うのか)によっても左右されるはず。
 特定のアプリをフルスクリーンで使うことが多いなら小サイズ・低解像度のモニターで間に合うかもしれないが、複数アプリを同時並行で使いたいならやはり大画面・高解像度が向いているだろう。そうしたアプリの「画面レイアウト」に関わるところもモニターのサイズ・解像度、あるいはアスペクト比が影響する部分だ。
 というわけで、それら「スケーリング」「距離」「画面レイアウト」という3つの観点において、サイズ・解像度の異なるモニター4機種それぞれでどう見え、適切と考えられるセッティングはどうなるのか、といったあたりを今回は探っていきたい。

「スケーリング」設定による見え方の違いをチェック
 まずはWindows環境で「スケーリング」を「100/125/150%」の3段階に切り替えていったときに、Webページがどのように表示され、どれが適切そうな設定となるのか確かめてみた。
 検証のために画面を撮影するにあたっては、モニター表面からカメラレンズまでの距離・角度・焦点距離をいずれの場合も一定にしている。これは画面から目までの距離を50cm程度に見立ててのものだ。そのため、27型以上のモニターでは、画面の周囲が一部見切れていることに注意してほしい。
各モニターで文字の大きさを変えながら見栄えを確認した
 ただし、表示サイズの「適切さ」は個人の感覚によって変わってくるところもあるため、その点についてはあくまでも筆者の主観となることをご容赦いただきたい。
A:23.8型フルHD(1,920×1,080ドット)
スケーリング100%
スケーリング125%
スケーリング150%
 検証機の中では最も小型となる23.8型、かつモニターの高精細化が進む昨今を鑑みれば、低解像度の部類に入るフルHD(1,920×1,080ドット)モデル。スケーリングを最低の100%にしても文字サイズは「適切」と思えるレベルよりもやや大きく感じられる。
 文字の視認性としては高いので、テキストの読みやすさは利点ではあるものの、長い文章をざっと斜め読みしていきたいときには目の動きやスクロール量が多くなるため効率的とは言いがたい。Webブラウザ側の文字サイズ変更機能で縮小したいところだが、解像度が高くないためフォントの種類によってはつぶれてさらに読みにくくなる可能性もあるのがネックだろうか。
B:27型WQHD(2,560×1,440ドット)
スケーリング100%
スケーリング125%
スケーリング150%
 フルHDのおよそ1.8倍もの広いデスクトップ空間を確保できるWQHD(2,560×1,440ドット)解像度のモデルは、近年価格を含めたバランスの良さで人気が高まっている。
 画面サイズが27型と少し大きめになっていることもあり、スケーリングは100%、もしくは125%とするのがベストなようだ。150%だとコンテンツの表示量が極端に少なくなってしまい、画面の広さを生かせなくなりそう。
C:31.5型4K(3,840×2,160ドット)
スケーリング100%
スケーリング125%
スケーリング150%
 さらに一回り大きい31.5型の4K(3,840×2,160ドット)モデル。解像度の高さは写真や動画の編集、ゲームプレイには魅力ではある。
 しかし、スケーリングを標準的な100%としてしまうと、文字などがどうしても小さすぎる状態となり、不都合に感じやすい。ある意味高解像度のメリットをスポイルしてしまう方向にはなるが、スケーリングは125%、または150%とするのがおすすめだ。
D:37.5型UWQHD+(3,840×1,600ドット)
スケーリング100%
スケーリング125%
スケーリング150%
 EIZOとしては初となる湾曲のウルトラワイドモニターで、解像度はUWQHD+(3,840×1,600ドット)。横方向の解像度が4Kと同等で、縦方向はやや狭い1,600ドットとなっており、24:10のアスペクト比を持つ製品だ。
 こちらは感覚的には27型WQHDのモデルに近い視認性で、スケーリングも100%とするのがちょうど良いと思われる。125%も文字サイズとしては許容範囲内だが、縦方向に狭い分、拡大率を大きくすると、Webのような縦スクロールして使うコンテンツの閲覧性が損なわれやすい点には注意したい。
 以下、参考までに100/125/150%のスケールごとに、画面サイズ違いで並べてみた。同じ30型クラスの大画面でも、31.5型4Kに対して、画素ピッチが大きい37.5型UWQHD+のほうが文字の視認性がかなり高いことが分かるだろう。
スケーリング100%
スケーリング125%
スケーリング150%

サイズ・解像度で異なる最適な「距離」をチェック
 PCを使う場合、手前にキーボードやマウスを置き、その奥にモニターを設置する、というのが標準的なスタイルとなることから、デスクに座ったときの目の位置からモニターまでは必然的にある程度距離が空くことになる。その距離をどれくらいにするのが適切なのかはモニターのサイズが関係してくる。基本的には小さければ近くに、大きければ遠くに、ということになるだろう。
 ただし、ここでもう1つ気にしておきたいのがデスクの奥行きだ。デスクの奥行きが狭いと大画面モニターを適切に使える位置まで離せず、結局実用に耐えない、なんてことになる可能性も……。そこで、4機種それぞれで画面からどれくらい距離をとると最も使い勝手が良くなりそうか、各機種で最適と思われるスケーリング設定も含め、確認してみた。
 なお、モニター本体(スタンド)の奥行きは、今回検証したモデルいずれについても各距離から奥側に+19cmほどあると考えていただきたい。つまり、モニターを50cm離れたところに設置するのが最適と考えられる場合、デスクの奥行きは69cmほど必要、ということになる。とは言え、姿勢や視力などによって当然ながら感じ方は変わってくるので、あくまでも目安として捉えていただきたい。奥行きが足りない場合はモニターアームを使用するのも手だ。
A:23.8型フルHD(1,920×1,080ドット)
画面からの距離:50cm、スケーリング:100%
 23.8型フルHDのモデルは、画面から(デスク手前端まで)の距離を50cm、スケーリングを100%とするのが最もフィットするように感じた。コンパクトなモニターサイズなのでより近くに置いて使っても良さそうではあるが、解像度の低さからドットの粗さが目立つうえ、スケーリングをこれ以上小さくできないことも考えると、近づけすぎるのはかえって非効率につながるものと思われる。
B:27型WQHD(2,560×1,440ドット)
画面からの距離:55cm、スケーリング:100%
 画面サイズが少し大きくなる分、27型は目から離し気味で使いたいところ。55cm離れた状態で、スケーリングを100%としたときが、表示されるコンテンツ量とサイズの関係性において一番バランスが取れるようだ。ドットの目立たないWQHD解像度の精細さもしっかり感じられる。
C:31.5型4K(3,840×2,160ドット)
画面からの距離:57cm、スケーリング:150%
 4K解像度ということで精細さは群を抜いているモデルだが、31.5型の大きさは目の移動量が多くなりすぎ、疲労がたまってしまいそうで、かなり離して設置する必要がある。今回の検証機の中では最も遠い57cmまで離し、それによって文字が見にくくなる分、スケーリングで150%まで拡大すると自然な見栄えになるだろう。
D:37.5型 UWQHD+(3,840×1,600ドット)
画面からの距離:55cm、スケーリング:100%
 インチサイズこそ37.5型で大きいが、縦方向がコンパクトなこともあり、27型WQHDモデルと同じ距離55cm、スケーリング100%とするのが最も違和感のないセッティングに思われた。横方向の視点移動はほかより確かに大きくなるものの、湾曲になっていることで画面の中心と端とで目の焦点の変化量が抑えられるせいか、通常のフラットな大画面モニターより画面全体を見渡しやすい(見渡すのに疲れにくい)のも特徴と言える。
湾曲になっているEV3895は、画面の中心と端とで視点からの距離差が少ないのが利点

効率よく使える機種ごとの「画面レイアウト」をチェック
 複数アプリを同時に扱ってマルチタスクな作業をしたいとき、実際のところどんな風にアプリウィンドウをレイアウトできるのだろうか。ここではノートPCと組み合わせて外部モニターとして使うときに、実用を考慮したウィンドウレイアウトのパターンをそれぞれでいくつか探ってみた。
A:23.8型フルHD(1,920×1,080ドット)
 アプリを全画面で使う分には、外部モニターとして十分な能力を発揮してくれる23.8型フルHDのモデル。サイズもコンパクトなので、モニターを縦に並べても、横に並べても使える柔軟性の高さもある。ただ、複数のウィンドウを表示させた場合にはそれぞれのコンテンツが画面内に収まりきらないケースが多い。1画面1アプリ、といった感じで割り切って活用するのが良さそうだ。
B:27型WQHD(2,560×1,440ドット)
 こちらの27WQHD型も、ノートPCの外部モニターとして使うときは縦並び、横並びどちらも実用的。複数アプリを表示するなら、縦長コンテンツ2つを1:1で並べるのもアリだ。また、Excelシートのように横幅のあるコンテンツは画面の3分の2に表示し、もう1つの縦長コンテンツ(Wordなど)は3分の1のサイズにして表示する、ということができるのも画面の広い27型ならではだろう。
C:31.5型4K(3,840×2,160ドット)
 31.5型4Kは、ノートPCの外部モニターとして使うときは縦に並べるのがおすすめ。横に並べて置くと視点の移動があまりにも大きくなりすぎるため、作業性が損なわれそうだ。しかし、複数アプリを表示して楽に扱える広大なデスクトップはさすが、といったところ。スケーリングが150%であっても高いマルチタスク性能をキープできる。
D:37.5型UWQHD+(3,840×1,600ドット)
 37.5型UWQHD+のウルトラワイドということもあって、やはりこちらもノートPCを横に置いてマルチモニターで使うのは視点移動が大きく、都合が良くない。縦に並べて使うのが最もスマートだろう。2つのアプリを1:1で表示したときの画面レイアウトは余裕があり、3つか4つ以上のウィンドウを乱雑に配置しても一定の視認性を確保でき、それでいて狭さを感じにくいのはウルトラワイドだからこそ、と言える。

PC2台活用に便利なピクチャー・バイ・ピクチャー
 今回使用した31.5型4Kモデル「EV3285」と37.5型UWQHD+「EV3895」の2機種は、その大画面をさらに有効活用可能な「PbyP」(ピクチャー・バイ・ピクチャー)機能を搭載しているのも特筆すべき点だ。「PbyP」とは、複数の端子から入力した映像を1画面内にまとめて表示する機能で、これら2機種については、たとえばDisplayPortに入力したメインPCの映像を画面左側3分の2に、USB Type-Cに入力したサブPCの映像を画面右側3分の1に、といった形で分割表示できる。
ピクチャー・バイ・ピクチャーの設定
モニターのメニューから「PbyP」を選択
画面左側と右側に表示する映像入力元を自在に設定できる
 複数のPCの画面を、いちいち入力切り替えすることなく1画面の中で確認する、といった使い方ができるので、サブPCで時間のかかる重い処理を走らせつつ、メインPCでほかの作業を進める、といったようなときに便利。あるいは、PCで仕事をしながらほかのデバイスの動画やゲーム映像を隣で流す、みたいな応用もOK。
 こうした大画面ならではの付加機能も駆使することで、単純な画面サイズや解像度の枠を越えた新たな使い勝手を実現できることも、購入の際には考慮に入れるべきだろう。
左側にWindowsノートPCの画面を、右側にMacの画面をそれぞれ表示させたパターン
画面右側にChromecastの映像を表示したパターン。動画や音楽をバックグラウンドで流しながら仕事をこなすのもいいかも

スタンドやインターフェイスによるセッティングのしやすさにも注目
 最後に、今回のFlexScanシリーズがモニターとしてほかにも豊富な機能を備えていることを改めて紹介しておきたい。
 まず、いずれの機種にも共通しているのが、標準で多機能なスタンドを採用していること。無段階の高さ調整はもちろんのこと、上下左右の向き変えができるチルト、スイベルに対応し、(ウルトラワイドのEV3895以外は)90度回転させて縦置き可能なピボット機能も備える。
 ケーブルをきれいにまとめられるケーブルマネジメントの機能もあり、デスク周りの整理整頓も容易。サイズ・解像度に加え、向きや配線などのセッティングも最適にすることで、より快適なモニター活用につなげられるはずだ。
無段階の高さ調整
上下方向のチルトのほか、左右方向のスイベルにも対応
90度回転させられるピボット機能。縦置きにするとWebサイトやTwitterなどSNSのチェックに便利
 また、4機種すべてUSB Type-Cによる接続が可能になっている。最近のノートPCで採用されているDisplayPort Alternate Mode対応のThunderbolt 4(USB4)ポートとケーブル1本で接続するだけで、映像の外部出力とノートPCへの給電を行なえるスグレモノだ。
 シンプルに接続できるということは、その分モニターとノートPCの配置の仕方にも自由度が生まれるということ。モニターの見やすさや使い勝手の良さを最大限に高めるのに、こうした機能が役に立ってくれるのは間違いない。
23.8型の「FlexScan EV2490」のインターフェイス。エントリー機ではあるがUSB Type-C対応
ウルトラワイドの「FlexScan EV3895」のインターフェイスはさらに充実している
 PCの用途、利用するアプリ、デスクの大きさなど身の回りの環境を改めて確認し、今回の検証内容も頭の片隅に置いたうえで、仕事や遊びを一番効率良くこなせる自分に最適なモニターをぜひ選んでいただきたい。

関連リンク FlexScan EV2490の製品情報 FlexScan EV2795の製品情報 FlexScan EV3285の製品情報 FlexScan EV3895の製品情報

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投稿者 Babaske

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