スマホ写真の定番縦横比は4:3。昔ながらのブラウン管TVと同じだ。でも、ワイドTVの普及や地デジ放送が開始されてからすでに20年。記憶にある最初のTV画面が16:9という赤ん坊も成人を迎えているはずだ。そろそろ16:9の縦横比が新しい当たり前を通り越して浸透してもよさそうなものだが。
写真の縦と横
 世界初のカメラ付きケータイと言えばシャープの「J-SH04」で、2000年11月にJ-PHONE(現ソフトバンク)から発売され、そのやり取りのためのサービス名である「写メール」は、ケータイで写真をやり取りすることの代名詞ともなった。そして、今なお、「写メを撮る」といった言い方が馴染み深い言葉として使われている。
 その次に流行った写真関連の言葉で印象に残っているものと言えば「インスタ映え」くらいだろうか。「インスタ映え」はそろそろ死語かもしれないが、「写メ」はずっとインパクトが強く、寿命も長いキーワードだ。そして、その「写メ」の縦横比は4:3、そして「インスタ映え」は1:1だというのが興味深い。
 2010年頃から、いわゆるSNSが浸透していく中で、そのプラットフォームは誰もが写真を公開できる格好の場となった。ちょうど3Gから4Gへの移行、そして、ガラケーからスマホへの移行期でもある。
 日本におけるTwitterのサービスインが2009年、FacebookやInstagramもそれを追う。日本では2011年の東日本大震災のタイミングも、いろんな意味でぼくらが目にするビジュアルに大きな影響を与えている。
 ガラケーでの写真撮影は、ほぼほぼ縦位置で撮られていたように思う。ハンドセット端末の形態を考えればその方が撮りやすい。だから横長の4:3縦横比は、実際には縦長の3:4と考えた方が合理的だ。
 ところがスマホへの移行が進む中で、スマホを横に構えて横位置で写真が撮られるようになっていく。ガラケー時代もそうやって横位置写真を撮っていたユーザーは少なくなかったのかもしれない。
 本当はスマホだってガラケーと同様にボディを縦に構えた方が撮りやすいのにだ。写真は横位置の方が好ましいという意識がよほど強かったのだろう。
 SNSが浸透していく中で、撮影するのはほとんどの場合スマホなのだから、これからは写真は縦位置で撮られることが増えていくのだろうと個人的には考えていた。ところが、その予想は完全に外れてしまった。
 今、Twitterのタイムラインで見ることができる写真の多くは横位置で撮られたものだし、Facebookも同様だ。Instagramに至っては基本的に1:1だ。この基本原則から外れた写真は、首なし美人的な悲惨な状態で世間にさらされる可能性に、みんな薄々気が付いているからだと思われる。
 タイムラインに表示される写真の表示時縦横比を決定するために自動的に再フレーミングするAIに実装されたアルゴリズムが完全とは言えず、さらに撮影者の意図をくむほど賢くないからだ。だから意図しない公開を回避するために冒険はしない、逆らわないのが賢い。
 つまり、古きゆかしき4:3の横長写真を公開すれば裏切られることはまずない。1980年の富士フイルムのTVCMで流行語になった「美しい人はより美しく、そうでない方はそれなりに」のように世間に公開されるわけだ。投稿者の期待通りに写真が表示される(それなりに……)。
縦長写真表示をTwitterがサポート
 個人的にはコロナ禍で外出する機会が少なくなり、TwitterやFacebookをスマホで眺めることが少なくなってしまった。ほとんどのタイムラインは自宅のパソコンで読むわけだが、それで気が付かなかったのか、Twitterは、2021年5月からスマホアプリでのタイムライン表示において、縦位置写真の表示をサポートするようになっている。写真が1枚のときに限ってだが、縦に構えてみることが多いスマホで大きく写真が表示されるようになった。

投稿者 Babaske

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です